注目のタグ
投稿日時:2026.03.12
イギリス政府の気候政策アドバイザーである気候変動委員会(CCC)が示した試算が、注目を集めている。
CCCは、英国が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を達成するための費用は、化石燃料の価格高騰による単一のエネルギー危機よりも、低く抑えられる可能性があると発表した。
4年前、ウクライナ侵攻で化石燃料の価格が高騰した当時、あまりの価格の高騰に、イギリスでは「Heat or Eat(暖房か、食事か)」という、どちらかの選択を迫られることを表現したレーズが広まり世界に衝撃を与えた。
そして今、イランへの攻撃により、再び化石燃料価格が高騰し、長期化する化石燃料危機の可能性が高まってきている。
CCCは、こうした化石燃料危機1回の経済損失と比較して、再生可能エネルギーをはじめとしたグリーン技術を導入し、化石燃料への依存をなくすことは、将来の経済にとって「最善かつ最も費用対効果の高い選択肢」になると試算したのだ。
ネットゼロ達成に必要な費用は年間約40億ポンドで、2050年までの累計では約1000億ポンドと見込まれている。
CCCは、この額はロシアによるウクライナ侵攻後に発生した化石燃料価格ショックによるエネルギー関連コストとほぼ同程度だと指摘。
CCC議長のナイジェル・トッピング氏は次のように述べている。
「現在の世界情勢を踏まえると、英国が価格変動の激しい海外の化石燃料への依存から脱却し、クリーンで国内由来の、より無駄の少ないエネルギーへ移行することがこれまで以上に重要になっています」
また今回のCCCによる試算は、一部の右派系シンクタンクやポピュリスト政治家、リフォーム党などが主張する「ネットゼロ政策が英国経済に9兆ポンドの負担をもたらす」との試算とも異なる結果となった。
CCCは、そうした試算は費用を誇張しているだけでなく、ネットゼロを達成しない場合に必要となる化石燃料購入費用を考慮していないとも指摘している。
また、CCCの試算を受けて、英国のエネルギー相エド・ミリバンド氏は次のように述べた。
「ネットゼロへの移行が、前回のガス価格危機の総コストよりも英国経済にとって安価であり、将来の化石燃料価格ショックから家庭を守ることができるとCCCが示したことは極めて重要です。これは、クリーンエネルギーという私たちの使命に反対する人々が、国家のエネルギー安全保障の追求や、光熱費の低減、そして子どもや孫を守る取り組みを放棄することになることを示すさらなる証拠です」
またCCCは、化石燃料依存から脱することで、人々は暖かい住宅、よりきれいな空気、徒歩や自転車などの移動手段の増加、健康的な食生活などの恩恵を受ける可能性があると指摘。
これにより、英国の国民保健サービス(NHS)と個人で、年間20億~80億ポンドの節約につながるという。
ネットゼロ達成に投資された1ポンドは2~4ポンドの利益を生むとしており、気候変動による被害の一部を回避することで、2050年までに最大1300億ポンドの節約効果も見込まれるという。
この分析は、2038~2042年を対象とする第7次カーボンバジェットに関する政府への助言を補足する報告書として公表されたもので、英国政府はこのカーボンバジェットへの対応を年内に発表する予定だ。
イギリスは2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにすることが法律で定められている。ただし保守党とリフォーム党はいずれも、この目標の撤廃を公約しており、推進派と撤廃派で意見が分かれている。
しかし、イラン戦争の影響により原油価格は月曜日に1バレル100ドル(約75ポンド)を超えるなど、再び化石燃料ショックが起きた。
これは過去4年間で2度目の大規模な原油価格ショックであり、専門家は地政学的な不安定さが続く中、今後も同様の事態が起きる可能性があると警告している。
そんななかでのCCCの今回の試算の発表は、大きな意味を持ちそうだ。今人類はありとあらゆる課題を突きつけられ過渡期を迎えているが、果たして世界はどの方向へと舵を切っていくのか。