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投稿日時:2026.04.14
環境問題への関心が高まる中で、企業による取り組みも増えている。一方で、それを一時的な活動で終わらせず、継続していくことは簡単ではない。
では、どうすれば環境配慮を“続く取り組み”として根付かせることができるのか。株式会社アーダ・ブレーンが展開する「ミズマモルプロジェクト」は、日常の製品を通じて水環境への負荷を減らし、持続可能な行動を広げる取り組みだ。
その実践には、環境と事業を切り離さずに設計するためのヒントがある。特徴的なのは、環境配慮を“特別な活動”として切り離すのではなく、日々の暮らしや事業の中に組み込んでいる点にある。
株式会社アーダ・ブレーン代表取締役の佐藤圭さんに、USME編集部が話を聞いた。
この取り組みの原点は、佐藤圭さんの原体験にある。幼少期から自然の中で過ごし、森や川に親しんできた。
「子どもの頃は、朝から晩まで林の中で遊んでいました。虫もたくさんいて、空気も澄んでいて、それが当たり前だと思っていたんです」しかし、その“当たり前”は、少しずつ変わっていったという。
「同じ場所なのに、いる虫が変わってきたり、植物が変わってきたり、空気の感じも違ってきたりするんですよね。言葉にしにくいんですけど、“何かがおかしい”という感覚があったんです」そうした違和感が決定的になったのが、小学校時代に参加した川での放流活動だった。
「川が泡で覆われていて、水質が明らかに変わっていたんです。そこに鯉を放流するというのが、子どもながらに“おかしいな”と感じて」そのときの感覚は、いまでも残っているという。
「見た目だけじゃなくて、匂いも違うんですよ。僕、もともと匂いに敏感で。だから余計に、“この環境は良くない”って感じたのかもしれないですね」その経験が、「水をきれいにしたい」という思いにつながっていく。
「最初は土木の分野に進もうと思っていました。ただ、家業を継ぐことになって、別の形で関わることになりました」選んだのは、日常に近い領域からのアプローチだった。
「インフラのような大きなところではなくて、生活の中で使うものから変えていけたらと思ったんです」
ミズマモルプロジェクトの考え方はシンプルだ。「環境のために頑張る、という形だと続かないと思うんです。意識しなくても環境に配慮できる状態にしたい」
その考えから、生活用品の見直しを軸に取り組みを進めている。
「例えばスポンジも、分解されるものがいいって言われますけど、すぐボロボロになって捨てられたら、結局ゴミは増えるじゃないですか」
ここで重視しているのは、“素材の良し悪し”ではない。
「何がいい、何が悪いっていう話じゃなくて、どう使われるかの方が大事だと思っていて」環境配慮というと、素材や成分の“正しさ”に目が向きがちだ。
しかし佐藤さんは、その前提自体を問い直す。「使い方まで含めて設計しないと、意味がないと思っています」
ミズマモルプロジェクトの特徴のひとつが、製品開発と社会活動を切り離していない点にある。
「環境だけを切り取るんじゃなくて、社会との関係も一緒に考えたいと思っていて」
と佐藤さんは話す。その考えは、製品の設計そのものに組み込まれている。
食用廃油を再利用した粉石けんの開発や、非木材紙のパッケージ、リサイクル率100%のアルミ容器の採用。いずれも単なる素材の選択ではなく、資源循環を前提とした設計だ。
さらに、その製品づくりのプロセスには、福祉作業所との連携も組み込まれている。
「一緒に作ることで、仕事として成立する形にしたいんです。単発の支援ではなくて、ちゃんと続いていく形にしたいと思って」
ここで重視されているのは、製品そのものだけではない。
“誰がどう関わるか”まで含めて設計することだ。取り組みは、製品の外にも広がっている。
「ビーチクリーンや里山再生もそうなんですが、実際に現場に行ってみると、見え方が変わるんですよね」
プロジェクトメンバーとともに現地に足を運び、環境課題を“体験として理解する”機会を重視している。
また、保護犬・保護猫活動とも連携し、動物にも安心して使える製品の提案を行っている。「人だけじゃなくて、動物や自然も含めて考えたいんです」こうした一連の取り組みは、それぞれが独立しているわけではない。
製品、製造、活動を分けて考えるのではなく、ひとつの流れとしてつなげていく。環境と社会を“外付け”するのではなく、事業の中に組み込む。その設計こそが、ミズマモルプロジェクトの土台となっている。
印象的なのは、どこにも“断定”がないことだ。
「プラスチックも全部が悪いわけではないと思っていて。使い方によっては、むしろ必要な場面もありますよね」環境配慮というと、“何が正しいか”という議論になりがちだ。しかし佐藤さんは、その前提自体に疑問を投げかける。
「何がいい、何が悪いって、簡単に分けられるものじゃないと思うんです。極端に振り切ってしまうと、見えなくなるものもある」
だからこそ重視しているのが、中庸という考え方だ。「どちらかに偏るのではなくて、ニュートラルな状態でいること。
その中で、どう使うかを考える方が大事だと思っています」“正しいものを選ぶ”のではなく、“どう使うかを設計する”。その視点が、同社のものづくりの根底にある。
株式会社アーダ・ブレーン代表取締役 佐藤圭さん
「環境保全って、特別なことではないと思っていて。日常の中の小さな選択の積み重ねで変わっていくものだと思うんです」と佐藤さんは話す。
その考えは、これまでの取り組みにも一貫している。特別な行動ではなく、日々の選択の中に組み込むこと。無理なく続けられる形にすること。
今後は、耕作放棄地の活用などを通じて、自然と関わる機会の創出にも取り組んでいく予定だという。
「土に触れたり、自然に触れることで、人の感覚も変わっていくと思うんですよね」
環境配慮を“意識”に委ねるのではなく、暮らしの中に溶け込ませていく。その積み重ねが、社会のあり方を少しずつ変えていく。
人、動物、植物が共に存在できる社会。その実現に向けて、アーダ・ブレーンの取り組みはこれからも続いていく。
取材・図解制作:USME編集部
写真:株式会社アーダ・ブレーン
事業内容:自然派・無添加の基礎化粧品や石けん、生活雑貨の企画・販売を手がける。生活協同組合や医療機関、助産院などを中心に展開し、「アーダ・ブレーン」「TAEKO」といったブランドを通じて、肌と環境に配慮した製品を届けている。
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株式会社アーダ・ブレーン
〒204-0011 東京都清瀬市下清戸2-563-1
TEL:042-495-8521