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投稿日時:2026.03.05
ここ数年、世界各国の企業の福利厚生はどんどん広がりを見せている。かつては「住宅手当」や「社員旅行」といったイメージが強かったかもしれないが、2025年以降はもっと“生活に寄り添う仕組み”へと進化しそうだ。
グローバル企業の動きをまとめた最新レポートでは、世界の働き方や価値観の変化が、福利厚生の形を大きく塗り替えていることが分かる。この記事では、そんな世界の福利厚生トレンドを紹介していく。
オーストラリアでは「病気休暇(sick leave)」にメンタル不調が含まれるのが一般的で、法律によって社員が安心して心のケアを理由に休暇を取れるようになっている。
企業側もこの動きを支え、短時間のメンタル休暇やマインドフルネス研修、カジュアルな相談窓口を整備。社員が“特別な事情がなくても”利用できるような仕組みとして日常業務に組み込まれている。
つまりメンタルヘルスは「制度」から「文化」へ。心をどう扱うかが、そのまま会社の信頼度を示す指標になっている。
アメリカの Salesforce, Inc.(セールスフォース/米国の大手クラウド型CRM企業)は、パンデミック以降に「Flex Team Agreements(フレックス・チーム・アグリーメント:チームごとに出社日と在宅勤務日を柔軟に決められる制度)」を導入。社員の生活や家庭の状況に合わせて働き方をカスタマイズできる仕組みで、ワークライフバランスの向上につなげている。
イギリスの PwC UK(プライスウォーターハウスクーパース英国法人/世界最大級の会計事務所)は「Friday 2PM Finish(金曜日は午後2時で仕事を終える制度)」を発表。週末の余暇をしっかり確保することで、社員のモチベーションと生産性を高めている。柔軟な働き方は、いまや福利厚生の“オプション”ではなく、中心的な制度にまで格上げされている。
ヨーロッパでは「ウェルビーイング」をキーワードに、社員の暮らしを包括的に支える取り組みが広がっている。
フィンランドのNokia Corporation(ノキア/通信機器メーカー) は、フィットネス費用の補助や栄養相談を提供するほか、社員が十分な休息をとれるよう「睡眠プログラム」を導入。
ドイツのSiemens AG(シーメンス/総合電機大手) は健康管理アプリを社員に配布し、歩数や食事記録を通じて日常的に健康を可視化している。
さらにインドのIT企業では「金融ウェルネス」への取り組みが進んでおり、AIを活用して社員一人ひとりの資産形成やキャリア設計をアドバイス。お金の不安を減らすことも福利厚生の一部と位置づけられている。
学びや成長の機会を福利厚生と捉える動きも強まっている。アメリカのGoogle LLC(グーグル) は、社員が勤務時間の20%を新しいアイデアやプロジェクトに使える「20%ルール」を維持。これはイノベーションの源泉であると同時に、社員にとって大きな学びの機会になっている。
フランスのL’Oréal S.A.(ロレアル/世界最大の化粧品会社) は「キャリアスクール(社外教育機関と連携したリスキリング支援制度)」を設置。学び直しを「会社が保障する成長機会」として制度化し、社員のキャリア形成を支援している。キャリアを伸ばす経験そのものが、社員にとって強力なインセンティブになっている。
世界で広がる潮流は、日本にとっても無縁ではない。むしろ少子高齢化と人材流動化が進む日本こそ、福利厚生の再設計が急務だ。
カゴメ株式会社はヨガや睡眠改善セミナーを社内に導入し、こころとからだの両面を支える。
パナソニック ホールディングス株式会社はフィットネス利用の補助やウェアラブルデバイスの導入で健康を可視化。株式会社日立製作所はリスキリング費用の補助を通じて社員の学び直しを後押ししている。
福利厚生は単なる付加的な制度ではなく、社員と企業の未来を形づくるための投資へと位置づけが変わってきた。世界ではすでに、メンタルヘルスの文化化、柔軟な働き方の制度化、暮らしを支える包括的な支援、学びと成長の機会提供、データを活用した最適化が進んでいる。
日本企業にとって重要なのは、この潮流を自社の文化や社会課題に合わせてどう取り込むかだ。少子高齢化や人材の流動化が進む中で、社員が「ここで働くことが人生を豊かにする」と実感できる仕組みを整えられるかどうか。これからの数年が、その分岐点になるだろう。