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投稿日時:2026.04.27
海の中を覗いたとき、そこに広がるのは、美しい景色だけではない。色とりどりの魚のあいだに、ビニール片や釣り糸が絡まり、海底には人の生活の痕跡が残り続けている。そうした現実を日常的に見ているのが、ダイバーという存在だ。
東京都・錦糸町を拠点とするDIVE SHOP Juaは、初心者向けのダイビングショップとして活動しながら、「海を楽しむこと」と「海を守ること」を分けずに伝えている。社員の近藤仙人さんに話を聞いた。
取材の中で印象的だったのは、「ただ潜る技術を教えるだけでは不十分だと思っている」という言葉だった。
DIVE SHOP Juaでは、ダイビングの技術講習と環境保全を切り離さない。特に重視しているのが、「中性浮力」と呼ばれるスキルだ。水中で浮きも沈みもしない状態を保つこの技術は、安全に潜るための基本であると同時に、海底環境を守るためにも欠かせない。
ゴミを拾おうとして着底すれば、その下にいる生物を傷つけてしまう可能性がある。「遊びながらゴミを拾うというより、学びながら身につけるイメージですね」
そう話す近藤さんの言葉からは、環境保全を特別な行動としてではなく、技術の延長として捉えている姿勢が伝わってくる。
さらに、知識面からのアプローチとして行われているのが、マリンバイオロジー講習だ。この講習では、海洋生物の生態だけでなく、人間が出したゴミがどのように影響を及ぼしているのかを学ぶ。
座学1日と、実際に海に潜って確認する実技2日という構成で、「知る」と「見る」をセットにしている。「知識を得ることで、海への愛着が変わっていくんです」
実際に参加者の中には、日常生活でもプラスチックの使用を意識したり、マイボトルを持つようになったりと、行動の変化が生まれているという。海の中での体験が、そのまま日常の選択につながっている。
こうした教育の延長線上にあるのが、水中クリーンアップの活動。伊豆・大瀬崎で行われたクリーンアップでは、他のダイビングショップと合わせて40〜50人ほどが参加し、回収されたゴミは40〜50袋以上にのぼった。
プラスチックやビニール袋、釣り糸、ルアーといったものが中心で、いずれも自然には分解されにくいものばかりだ。
「少なくとも、減ってはいないと感じています」近藤さんはそう語る。ダイビングを始めた約15年前と比べても、生態系の変化を感じる場面は少なくないという。
海の中の問題は、表からは見えにくい。だからこそ、潜る人にしかわからない現実がある。
DIVE SHOP Juaでは、こうした取り組みを特別なイベントに限定していない。「1ダイブ1クリーン」という考え方のもと、日常のダイビングでも、1回潜るごとに1つ以上のゴミを持ち帰ることを習慣としている。
「海がないと、この仕事は成り立たないので」取材中、自然に出てきたこの言葉が、この取り組みの根底にある考え方を端的に表していた。
恩返しというと大げさに聞こえるかもしれないが、近藤さんにとってはごく当たり前の感覚に近いのかもしれない。
環境保全の前提として、DIVE SHOP Juaが徹底しているのが安全性だ。少人数制での講習、基礎スキルの徹底、そして不安があれば日程を延ばしてでも再講習を行う姿勢。これらはBSACジャパンの総会でも評価され、表彰を受けている。
「安全に潜れるようになって、初めて周りを見る余裕ができると思うんです」その言葉の通り、技術と安全が整っていなければ、環境への配慮は成立しない。
ダイビングは、非日常の体験として語られることが多い。しかし、その体験の中で見えてくる現実は、決して非日常ではない。海の中にある問題を知り、技術を身につけ、自分の行動が少し変わる。
そうした積み重ねによって、ダイバーは「楽しむ人」から「守る人」へと変わっていく。「この取り組みが、ダイビング業界全体に広がっていったらいいなと思っています」取材の最後にそう語った近藤さんの言葉は、強い主張というよりも、静かな願いのように聞こえた。
特別な誰かではなく、「これならできそう」と思える人を増やしていくこと。DIVE SHOP Juaの取り組みは、その入り口をつくっている。
取材:USME編集部
写真提供:DIVE SHOP Jua
写真:Freepik
| 企業名 | DIVE SHOP Jua(株式会社Enposal) |
|---|---|
| 住所 | (臨時移転中→)東京都江東区大島2-3-1東洋産業2階 |
| お問い合わせ先 | https://jua.information.jp/contact/ |
| 公式サイト | https://jua.information.jp/ |