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『現場』の声から始まった改革。|東葉警備保障が挑む、働く環境から変える組織再設計
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『現場』の声から始まった改革。
東葉警備保障が挑む、働く環境から変える組織再設計

投稿日時:2026.05.29

商業施設やイベント会場、道路工事の現場など、私たちの日常の安全は「警備員」の存在によって支えられている。しかし、一般消費者にとってその業務は、決められた場所に立ち誘導を行うという表面的なイメージに留まりがちだ。その実態は、人々の安全と日常の平穏を最前線で守る、社会に不可欠なインフラとしての重要な役割を担っている。

千葉県柏市に本社を構える東葉警備保障株式会社は、1979年の創業以来、施設警備や交通誘導警備、イベント警備など多岐にわたる現場を手がけてきた。現在では約1,050名の従業員を抱え、関東全域の安全を支える規模へと成長している。

同社はいかにして現場で働く社員の環境を整え、その労働価値を高めているのか。代表取締役社長の福岡直規氏への取材から見えてきたのは、業界の構造的課題に対する具体的なアプローチと、現場の声を起点とした実効性のある組織設計だった。(取材:USME編集部)

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「人にしかできない判断」。警備業における本質的な役割

「AIやロボットの技術が急速に発展し、様々な仕事が自動化されています。しかし、現場で人が瞬時に状況を判断し、直接対応しなければならない業務の本質は変わりません。むしろ、その重要性は今後さらに高まっていくと考えています」

福岡社長は、現代の警備業が担う役割をそのように位置づける。

交通誘導や施設警備の現場では、天候の急変や予期せぬトラブル、歩行者やドライバーとの意思疎通など、マニュアルだけでは対応できない事態が日常的に発生する。

その場で状況を五感で捉え、柔軟かつ的確に判断する「人」の力こそが、警備の根幹を成している。監視カメラの精度が向上しても、現場で困っている人に直接声をかけ、安全な誘導を行うのは人間の役割に他ならない。

オフィスワークのデジタル化やリモートワークが普及し、働き方が多様化する現代においてこそ、現場に立ち、人々の生活を直接守る仕事の存在価値が改めて浮き彫りになっている。

同社は、警備という仕事が社会を根底から支えるインフラであるという強い誇りを持ち、最前線で働く社員に対して適切な評価と環境づくりを行うことを、経営の重要な責任として位置づけている。

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業界が抱える「高齢化と人手不足」の背景

現在、警備業界全体が直面している大きな課題が、深刻な「高齢化」と「人手不足」だ。労働集約型の産業である警備業は、少子高齢化の進む日本社会においてその影響を強く受けている。

その要因の一つとして、勤務形態の不規則さや、夏季・冬季の厳しい屋外環境といった労働面の負担が挙げられる。

「警備の仕事は、現場によって勤務時間や環境が変動しやすい特性があります。また、現場への直行直帰が多いため、会社や他の社員とのコミュニケーションが希薄になりやすいという課題もありました。単に人員を配置するだけでなく、社員が安心して長く働き続けられる環境をいかに構築するかが、定着率向上のための最優先事項でした」

一度離職率が高まれば、残された人員の負担が増し、さらなる人材不足を招く。同社では、この構造的課題に対して場当たり的な対策ではなく、組織の仕組みそのものを改善する必要性を強く感じていた。

現場の提案と離職の教訓。意思決定のスピードという課題

社員にとって働きやすい環境を整える。その方針を実効性のあるものにするためには、現場の実態を正確に把握しなければならない。同社が現在の組織体制へと舵を切る背景には、過去の苦い経験があった。

ある夏の時期、連日の猛暑の中で業務にあたる現場の社員から「空調服(ファン付きウェア)を導入してほしい」という具体的な提案が上がった。

熱中症から身を守り、安全に業務を遂行するための切実な要望だった。しかし、会社側が予算の策定や導入に向けた社内調整、手続きに時間を取られ、即座に対応を決定できずに数週間が経過してしまった。

その結果、提案を上げた社員は結果的に会社を離れることになった。現場が求めるスピード感と、本社の意思決定のタイムラグが、社員に現場の環境が軽視されているという誤解や失望を与えてしまったことが原因だった。

言葉だけで「社員第一」を掲げていても、現場の求めるタイミングで具体的なアクションを起こせなければ信頼はつなぎ止められない。この出来事は、同社の経営陣にとって、現場の声を吸い上げる仕組みとその対応スピードを根本から見直す大きな契機となった。

リアルタイムの声を吸い上げる「仕組みの設計」

「現場から提案や要望があった際、即座に動けなければ意味がないと痛感しました。そこから、現場の言葉を確実にキャッチし、迅速に経営判断へ繋げるための環境設計を進めました」

直行直帰が多く、本社との物理的な距離が生じやすい警備員の孤立を防ぎ、会社との繋がりを維持するため、同社はテクノロジーを活用した仕組み化を実施した。

社内の連絡ツールとして、全警備員がチャットでやり取りできる「KOMAINU」を導入し、一部業務では「Slack」も活用している。これらの導入により、現場の声を以前よりも迅速に共有できる環境が整った。空調服の教訓を踏まえ、現場の「困りごと」に対してリアルタイムでレスポンスを返し、速やかに対策を講じる体制を確立している。

さらに、2024年からはデータに基づいて社員の心身の健康をサポートする「健康経営」に本格的に着手した。定期的なアンケートを実施し、睡眠、運動、食生活、ストレス、そして働きがいに関する状態を可視化。現場の負担やモチベーションの変化を未然に察知し、具体的な就業環境の改善へと繋げるサイクルを構築している。

デジタルツールによる日常的な繋がりの創出と、現場の声に即座に応える本社の姿勢。この取り組みにより、現場の社員は自分の声が会社に届いているという安心感を持つことができるようになり、結果として社員の定着率向上という確かな成果を生み出している。

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10年以上続ける待遇改善と「6%昇給目標」の実現へ

就業環境の改善と並び、社員の働きがいを高める上で不可欠なのが「経済的な待遇の向上」である。東葉警備保障の取り組みにおいて特徴的なのは、社員への還元を抽象的な理念に留めず、明確な数値目標として経営計画に組み込んでいる点だ。

「私たちは10年以上にわたり、お客様に適正な取引価格(値上げ)のお願いを継続してきました。その上で、毎年社員の待遇改善にも取り組んでいます。今期については、最低賃金の上昇率と同程度となる『6%の昇給』を目標に掲げ、実施しました」

このサイクルを継続するためには、現場を支える営業部門の役割が極めて重要となる。営業担当者は顧客企業に対して、東葉警備保障が提供する警備の品質や安全性を客観的に提示し、適正な受注額での契約更新を粘り強く交渉している。

「営業が現場の価値を適切に社会へ訴え、価格改定への理解を得ることで、現場社員の待遇改善の原資を確保しています。来期以降も、6%程度の昇給を一つの目標として継続していきたいと考えています」

社会インフラとしての重要性を説くだけでなく、実際の生活を支える給与水準を向上させる。経営陣、営業、現場がそれぞれの役割を全うし、適正な経済循環を生み出す仕組みこそが、同社の高い組織力を支える原動力となっている。

孤立を防ぐ横の繋がりと、キャリアアップの支援

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個々で現場に向き合うことが多い警備業において、組織としての連帯感をいかに醸成するかも重要なテーマである。数万人規模の動員が予想される国際的な大型イベントでの群衆警備や、都心部の象徴的な超大型商業施設のオープニング警備といった「大型警備案件」だ。

「普段は別々の現場で働いている仲間が、国際的な大型イベントなどの大規模警備で一堂に会します。互いの知識や技術を間近で確認し、協力して無事故で成功させた時の達成感は、日々の業務の誇りに繋がっています」

こうした経験を通じて、社員は自身の実務が社会の安全に貢献していることを肌で実感していく。同社では、現場のプロフェッショナルとして長期的にキャリアを築けるよう、「現場正社員制度」の推進や、業務に必要な資格取得の全額支援も行っている。

社員の成長や幸せを素直に喜ぶ。そんな福岡社長の姿勢は、日頃の言葉にも表れている。

「資格試験に合格したという報告や、社内結婚の報告を受けると、やはり会社をやっていてよかったなと実感します。みんなが社内で仲良くなって、家族になっていく。そういう報告を聞くと、本当に嬉しいですね」

「現場職には誇りを持って働いてもらいたい。そのためにも、しっかり給与を上げていく。同時に現場の環境を改善して長く勤めてもらいながら、社会に必要な仕事として、地域貢献や社会貢献ができるようにしていきたいと思っています」

サステナブルな経営とは、決して理想論を掲げることではない。日々の課題を実直に見極め、今できる制度や還元の仕組みを、一つずつ設計していくことだろう。

取材:USME編集部
写真提供:東葉警備保障株式会社

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東葉警備保障株式会社 代表取締役社長・福岡直規氏

東葉警備保障株式会社

住所 〒277-0852 千葉県柏市旭町1-2-1 第11関口ビル4F
公式サイト https://toyo-security.jp/
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