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投稿日時:2026.07.18
今年の夏、地中海の定番だったサントリーニ島やアマルフィ海岸で、この10年で初めて予約数が落ち込んだ。理由は単純だ、「暑すぎる」のだ。代わりに今旅行者が向かっているのは、ノルウェーのフィヨルドやアイスランドの氷河など。
クール(涼しい)とバケーションを掛けた「coolcation(クールケーション)」と呼ばれるこの現象が、今、欧州を中心に旅行トレンドとなっている。
2026年は5月・6月・7月と3度の大規模熱波が欧州を襲い、6月にはスペインで45.1℃、フランスでは1947年の統計開始以来最も暑い日を記録した。遠く離れたここ日本でも、そのニュースが日々流れているほどだ。
WHOによれば、6月下旬以降の欧州の超過死亡者数は少なくとも1,300人。国際研究チームは、この規模の熱波は人為的な気候変動なしには「起こり得なかった」と結論づけている。
もはや世界各地で「暑い夏」は「危険な夏」へと変わりつつあるが、それが夏の旅行先選びそのものを変え始めている。
海やプールなど、夏に夏らしいバケーションを過ごすのは、もう古い習慣となっていくのだろうか。
レンタカー大手Sixt社の分析によると、欧州ではこの夏の旅行先として、ノルウェー・スウェーデン・デンマークへの予約が前年比で最大35%の増加が見込まれているという。北欧各国の7月の平均最高気温はおよそ16〜23℃。フィヨルド沿いのノルウェーは16℃前後と、まさに"避暑"の名にふさわしい涼しさだ。
「coolcation(クールケーション)」という検索ワードも前年比で急増しており、とくに氷河や北極圏の景観が売りのグリーンランドの首都ヌークの急増が目覚ましいという。
だが、この避暑地にも皮肉な現実がある。2025年夏、北欧は観測史上最も深刻かつ長期化した熱波に見舞われ、フィンランドでは30℃超えの日が22日連続、ノルウェーでも34℃を記録した。
現地の気象専門家は「緯度が高いほど気温上昇のペースは速い」と指摘する。逃げ込んだはずの“涼しさ”にさえ、裏切られる日が来るかもしれない。実際に日本でも「その日の最高気温が北海道だった」というニュースを耳にすることは珍しくなくなってきた。
そんな欧州の流れはアメリカにも波及している。涼しい都市を選ぶ旅行者が前年より17%増加し、価格が16%高くても涼しい目的地への航空券が選ばれるようになったとRunway Magazineは報じている。
ただし、アメリカにおける動機は「暑さ回避」だけでなく、旅行先の混雑回避やインフレ下でも体験にお金をかけたいという消費心理も絡んでおり、欧州とは少し違う文脈で同じ現象が起きているとも指摘される。
チェコなど中欧の穴場都市もアメリカ人旅行者の間で前年比149%増と急伸しており、まだ「クールケーション一択」ではないようだ。
これまでも様々なバケーションのトレンドは存在してきたが、「クールケーション」は気候変動を背景に生まれた、決して楽観的ではないトレンドだ。日本でも危険な暑さが夏の風物詩になりつつあり、日本の夏のバケーションもいずれ姿を変えるのだろう。
「クールケーション」は旅先のトレンドではあるが、それは今後生活のあらゆることに気候変動が影響を及ぼしていく、その予兆なのかもしれない。
Photo: Magnific