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投稿日時:2026.10.02
引き出しの奥に、使わなくなったスマホや古いイヤホン、充電ケーブルが眠っていないだろうか。実はこうした「電子ごみ」が、いま世界中で大きな環境問題になっている。本記事では、e-waste(イーウェイスト)の基本から、国内外の最先端の取り組み、日本での正しい捨て方までをわかりやすく解説。
e-wasteとは「Electronic Waste」の略で、使われなくなった電気・電子機器のごみのこと。スマートフォンやパソコン、テレビ、冷蔵庫といった家電はもちろん、電子たばこ、ワイヤレスイヤホン、電池を使うおもちゃなど、電気で動くものはほぼすべて含まれる。
しかし、電気・電子機器は以前から存在するものだが、なぜ今e-wasteと呼ばれ電子ごみが問題になっているのか、そう疑問に抱く人もいるのではないだろうか。
この背景には、ここ十数年で状況が大きく変わったことにある。国連の報告書は、e-wasteの増加にリサイクルが追いつかない理由として、技術の進歩による買い替えの早まり、消費量の増加、製品寿命の短さ、修理の選択肢の少なさなどを挙げている。
かつて家庭の電気製品といえば、テレビや冷蔵庫、洗濯機などいわゆる家電が中心だったが、今はさらに細分化され、スマホやワイヤレスイヤホン、電子たばこ、電動自転車、ハンディファンなど、一人が持つ機器の数そのものが増えた。
しかも、小型の機器ほどリサイクルされにくいうえ、多くの製品に小型で高性能なリチウムイオン電池が入るようになり、捨て方を誤ると火災につながる新たなリスクも生まれている。
また大きな家電などに比べて身近な製品ほど買い替えのサイクルが短く、気づかないうちに家庭の中に「隠れe-waste」がたまりやすい。これが今、電子ごみが問題となってきている背景なのだ。
国連機関が2024年に発表した報告書「Global E-waste Monitor」によると、2022年に世界で発生したe-wasteは約6,200万トン。2010年と比べて約8割も増えている。その一方、きちんと回収・リサイクルされたのは全体の2割ほどにとどまる。
このままのペースが続けば、2030年には約8,200万トンに達すると予測されている。電子機器が暮らしに欠かせないものになるほど、ごみの量も増えているのだ。
e-wasteが引き起こす3つの問題
e-wasteが問題となっている理由は、単に「ごみが増える」ことだけではない。ここでは、電子ごみがもたらす環境や健康、資源、そして私たちの身近な安全に関わる3つの問題を見ていく。
1. 有害物質による環境・健康への影響
電子機器には、鉛や水銀など、人や自然に有害な物質が含まれており、不適切に埋め立てられたり燃やされたりすると、土壌や水、空気を汚染するおそれがある。
とくに深刻なのが、先進国から途上国へ流れ込んだ電子ごみ。現地では、子どもを含む人々が十分な防護なしに電子ごみを燃やしたり手作業で分解したりして金属を取り出しており、健康被害が問題になっている。
2. 貴重な資源のムダづかい
電子機器には金・銀・銅・レアメタルといった貴重な金属が使われており、廃棄された家電は「都市鉱山」とも呼ばれている。
捨ててしまえばただのごみとなってしまうが、回収すれば貴重な資源として、新たな製品の材料として生まれ変わることができる。東京2020オリンピック・パラリンピックのメダルが、回収された小型家電の金属から作られたことも記憶に新しい。
3. リチウムイオン電池による火災
近年、日本でとくに増えているのが、ごみ収集車やごみ処理施設での火災。原因の多くは、モバイルバッテリーや加熱式たばこ、スマートフォンなどに入っているリチウムイオン電池。
環境省の調査では、2024年度にごみ処理の過程で起きた火災事故等は、発煙・発火を含めて約2万3,000件にのぼっている。普及の早さに対し、取り扱いや捨て方の認識が十分に広まっていないことも要因といえる。
e-wasteの課題に対して、世界では企業や行政が新しい仕組みづくりを進めている。ここでは、製品づくり、資源の回収、法律という3つの視点から代表的な事例を紹介。
Apple:製品の素材をリサイクル材へ
Appleは2026年4月、2025年に出荷した全製品の素材のうち30%が再生材だったと発表した。自社設計のバッテリーに使うコバルトはすべて再生材に変更しており、回収したiPhoneを分解する独自のロボット「Daisy」なども、資源の回収に活用されている。
三菱マテリアル:世界トップクラスの「都市鉱山」製錬
三菱マテリアルは、電子機器から取り出した廃基板(E-Scrap)を日本や欧州、北米から集め、金・銀・銅などの金属を回収している。処理能力は年間約16万トンと世界トップクラスで、2030年度末までに約24万トンへの拡大を目指す。
EU:「修理する権利」の法制化
EUでは2026年7月31日、「修理する権利」を定めた指令が各国で適用された。スマートフォンや洗濯機などを対象に、メーカーは保証期間が過ぎた後も、妥当な価格と期間で修理に応じることが求められる。
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電子機器は、正しいルートで回収されなければ資源として活かされないばかりか、捨て方を誤れば火災などの原因になってしまう。日本では製品の種類ごとに処分のルールが法律で定められているため、主な製品の捨て方を確認しておきたい。
エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機
「家電リサイクル法」の対象。購入した店や買い替え先の店に引き取りを依頼し、リサイクル料金と収集運搬料金を支払って処分する。
パソコン
メーカーによる回収・リサイクルが基本。「PCリサイクルマーク」がついていて、メーカーが存在する製品なら、追加料金なしで回収してもらえる。
スマホ・デジカメ・ゲーム機などの小型家電
自治体の回収ボックスや、家電量販店の回収サービスを確認。スマホは携帯電話ショップでも回収している。
モバイルバッテリー
家電量販店などの回収箱や自治体の回収を利用し、膨らんだり破損したりしているものは回収箱に入れず、自治体やメーカーに要相談。2026年4月からは法改正により、モバイルバッテリーやスマートフォンなどのメーカーに回収・リサイクルが義務づけられた。
【関連記事】モバイルバッテリーの捨て方、ごみにせず「資源」に戻す正しい方法
e-wasteは、便利な暮らしの裏側で生まれている身近な環境問題。世界では企業や行政による資源循環の取り組みが加速しており、日本でも2026年の法改正で、メーカーの回収責任が強化された。
こうした仕組みを生かせるかどうかは、使い終わった製品を私たち一人ひとりが正しいルートに戻せるかにかかっている。企業や行政だけでなく、使う側である消費者も最後まで責任を持って扱うことが求められている。
Photo:Magnific