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投稿日時:2026.05.21
近年、サステナビリティへの関心が高まるなか、パッケージ業界は新たな転換期を迎えている。
これまではサステナブルなパッケージというと「プラスチックを減らす」「紙に置き換える」といった素材の転換が中心だった。しかし、現在の欧米では、それだけでは不十分という考え方が主流になりつつある。
いま求められているのは、製品を使い終えた後まで含めて設計する“循環型パッケージ”だ。
循環型のパッケージが求められる現状を象徴しているのが、EUで成立した「PPWR(包装・包装廃棄物規則)」。
これは単なる環境ガイドラインではなく、包装材に対して、リサイクルの可能性や再生材の利用率、過剰包装の削減、再利用性など包括的に求めていく規制だ。
EUでは、都市ごみの約36%が包装によるものとされている。これからの企業には、“見た目のエコ設計”ではなく、実際に資源循環ができ、ごみ問題の解消につながる“実行力のあるエコ設計”が迫られている。
こうした背景から、欧米では「paperisation(紙化)」が加速している。とくに食品や日用品の軟包装分野では、プラスチックから紙・繊維系素材への移行が盛んだ。
その背景には、消費者の紙素材への好感度が高いことに加え、EUではEPR(拡大生産者責任)制度によって、リサイクルしにくい包装を使用するほど企業負担が増えることも、サステナブルパッケージの推進を後押ししている。
ただし、紙素材が万能というわけではない。紙パッケージは、防湿性をはじめとした食品保護機能との両立は依然として課題であり、紙は汚れに弱くリサイクルが難しい場合もある。「紙にすれば環境に優しい」という単純な話ではなくなっているのも事実だ。
そんななか注目されているのが、“単一素材パッケージ”だ。
従来のパッケージは、PETやアルミ、ナイロンなど複数素材を貼り合わせることで性能を高めてきた。しかし機能性が高まる一方で、分別や再資源化の視点に立ってみると、複合素材はリサイクルのハードルが高い。
EUでは現在、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)の単一素材で高機能性を持たせた包装材の開発が進んでいる。
次世代のパッケージのサステナビリティは、販売までがゴールではなく、製品の使用後に「リサイクル工程に乗せやすい設計」までを視野に入れたパッケージが競争力となっているのだ。
また、技術面でも次世代パッケージの開発競争が激化し、さまざまな新たな技術が誕生している。
英国のNotplaは、海藻由来素材を使った生分解性パッケージを展開し、食品サービス分野で採用を拡大中だ。
スウェーデンのPulPacは、水の使用量を大幅に削減できる「乾式成形ファイバー技術」を開発し、プラスチック代替として注目を集めている。
また欧州では、パッケージの表面に目に見えないデジタルコードを埋め込み、AI選別機が素材情報を読み取ることができる「HolyGrail 2.0」も進行している。
この技術は、リサイクルを“人の努力”ではなく、“データとインフラ”で成立させようとしている点が興味深い。何事も誰かの負担によって続いているものは終わりが来るものだ。「持続可能」を考えるうえで、人の善意や努力に頼らないこの視点はとても重要といえる。
欧米のサステナブルパッケージは、単なる「脱プラ競争」を経て、もはや次のフェーズへと進んでいる。
いま重要なのは、素材そのものよりも、「回収されるか」「循環しているか」「再資源化されるか」「再利用されるか」といった循環全体の設計だ。EUの規制は、どの国の企業であれEUをマーケットとする企業であれば対象になるため、この流れは遠くの国の出来事ではない。
欧米と比較して、環境への取り組みや意識が遅れているといわれる日本は、この分野で乗り遅れずに最前線で戦っていけるのか。今後の企業の動きに注目したい。
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