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投稿日時:2026.04.17
「取り組みは増えているのに、なぜか伝わらない」
総務や人事、広報の現場にいると、こうした違和感を持つ場面は少なくありません。
新しい制度を導入し、社内の取り組みも着実に増えている。それでも、採用にはつながらず、営業にも活かしきれない――そんな状況に直面している企業も多いのではないでしょうか。
何かが足りないように感じるかもしれません。しかし実際には、取り組み自体が不足しているわけではありません。
多くの場合、すでにある取り組み同士が、うまくつながっていないだけ。ではなぜ、同じ会社の中で行われている取り組みが、ひとつの価値として伝わらないのでしょうか。
企業の中では、それぞれの役割に応じて情報発信が行われています。
広告は商品やサービスの魅力を伝え、採用は働く環境や制度を説明し、営業は具体的な価値や条件を提示します。それぞれに明確な目的があり、現場では丁寧に作られているはずです。
しかし、その一つひとつが正しく機能するほど、全体としては分断されやすくなってしまうのも事実です。
経済産業省が人的資本やブランド価値の開示を求める中で、企業活動を統合的に説明する必要性が指摘されているのも、この構造が背景にあるでしょう。
評価指標が異なるまま個別最適が進めば、企業の姿はどうしても断片的に見えてしまいます。
結果として、社外から見たときに「同じ会社の話をしているはずなのに、つながっていない」と感じられてしまうのです。
求職者や取引先が企業を見るとき、単なる情報の量だけで判断しているわけではありません。
厚生労働省の調査でも、企業選びにおいては仕事内容や待遇に加えて、企業の考え方や社風といった“中身”が重視されています。つまり、断片的な情報ではなく、企業全体としての一貫した理解が求められているということ。
一方で企業側は、場面ごとに異なる切り口で情報を発信しています。
広告では機能や強みを語り、採用では働きやすさを伝え、営業では条件や価格を提示する。それぞれは正しいのですが、そのあいだに共通する軸が見えにくい状態になっています。
その結果、受け手の中で情報がつながらず、「結局どんな会社なのか分からない」という印象が残ってしまいます。
伝えていないのではなく、つながっていないから伝わらない。この状態が、多くの企業で起きているのです。
社会貢献やサステナビリティの取り組みも、同じ構造の中で分断されやすい領域です。
環境省や経団連は、こうした取り組みを経営と統合する重要性を示していますが、実務の中では別枠として扱われるケースが少なくありません。
広報として発信されることはあっても、採用や営業の文脈には接続されない。結果として、「いいことをしている会社」という印象にはなっても、それが具体的な評価や行動にはつながりにくくなります。
本来であれば企業の姿勢を示す重要な要素が、他の活動と結びつかないまま存在しているのです。
ブランドは、特別なものではありません。企業が何をしているのか、なぜそれをしているのか、社会とどう関わっているのか。そうした情報が一貫した文脈として理解される状態、それがブランドに近いものです。
経済産業省が示すブランド価値の考え方でも、個別の活動ではなく、継続的な価値の積み重ねが重視されています。
広告も採用も営業も、それぞれが異なる方向を向いている限り、この状態にはなりません。逆に言えば、すでにある取り組み同士がつながれば、それだけで見え方は大きく変わっていくでしょう。
Image of business workplace with team partners interacting on background
課題を感じたとき、多くの企業は新しい施策を検討します。しかし、分断の問題に対して必要なのは追加ではありません。
これまで行ってきた取り組みを振り返り、それがどのような背景で始まり、どんな価値につながっているのかを整理すること。そして、それらを同じ前提で語れる状態にすることです。
USMEが担っているのも、この「行動の文脈を整える」という役割です。取り組みを単発の施策としてではなく、背景や経緯を含めて言葉にすることで、社内外で共有できる軸が生まれます。
その結果、これまでバラバラに見えていた取り組みが、ひとつの流れとして理解されるようになります。
広告・採用・営業がバラバラに見えるのは、どれかが不足しているからではありません。
すでにある取り組みが、それぞれ独立したまま存在しているために、全体としての意味が見えなくなっているだけ。点はすでにあります。必要なのは、それらを線として捉え直す視点です。
その視点が生まれたとき、これまでの取り組みは単なる施策ではなく、企業の価値として機能し始めます。
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