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投稿日時:2026.03.23
週4勤務と同じように、いま欧米で静かに前提が変わりつつあるテーマがある。それが「給与」だ。これまで給与は、外に出さないものだった。同じ会社にいても、誰がいくらもらっているのかは分からない。けれどいま欧米では、その前提が崩れ始めている。
背景にあるのは、制度の変化だ。ヨーロッパでは2023年に賃金透明性指令が成立し、加盟国は2026年6月7日までに国内法へ反映することが求められている。
この指令では、応募者が採用前に報酬水準の情報を得られるようにすることや、一定規模以上の企業に対して男女間の賃金格差の報告を求めることなどが盛り込まれている。
つまりヨーロッパでは、給与を非公開にする理由を、企業側が説明しなければならない場面が増えていくと言われている。
この流れはヨーロッパに限ったものではない。アメリカでも、給与レンジの開示を求める動きが広がっている。
ニューヨーク州では、従業員4人以上の企業に対して、求人・昇進・異動の告知において報酬額またはそのレンジの明示が求められている。また、カリフォルニア州でも同様に、求人情報pay scale(給与レンジ)の記載が必要とされている。
欧米では、給与は「交渉で決まるもの」から、最初からある程度開示される情報へと変わりつつある。
こうした流れの中で、企業側の動きも変わってきている。アメリカ発のソーシャルメディア運用ツール企業、Buffer。フルリモートで働くメンバーを抱え、透明性の高い組織運営で知られている。同社は2010年代前半から、給与の仕組みを公開してきたことで知られれている。
職種や役割ごとの給与レンジだけでなく、どのような基準で報酬が決まるのか、その計算式も外部に公開している。
Buffeが給与を公開した理由はシンプルだ。不透明さが、不公平を生むと考えたから。欧米では特に、ジェンダー間の賃金格差や待遇の不透明さが長年の課題として指摘されてきた。
その中で、基準を明確にすること自体が、組織の信頼につながるという考え方が広がっている。給与の公開は、単なる情報開示ではなく、組織の透明性を担保する仕組みとして機能している。
もうひとつの例が、GitLaだ。GitLaは、ソフトウェア開発プラットフォームを提供するアメリカ発の企業で、世界中にメンバーを持つフルリモート組織として知られている。
同社は「ハンドブック」と呼ばれる公開ドキュメントを持ち、業務プロセスや意思決定のルールを外部にも開示している。
報酬についても例外ではない。GitLabは、給与そのものの一覧を公開しているわけではないが、報酬の考え方や算定のフレームワークを詳細に公開している。グローバルに人材を採用する中で、どこにいても納得できる基準を持つことが重要になっているのだ。
こうした欧米の動きは、採用のあり方も変えている。応募する側は、条件を事前に理解した上で意思決定できる。企業側も、ミスマッチを減らすことができる。給与を隠すよりも、最初から開示するほうが合理的な場面が増えている。
もちろん、給与公開は簡単な決断ではない。評価制度が整っていなければ、かえって不満を生む可能性もある。欧米でも、すべての企業が導入しているわけではなく、慎重に検討している企業も多い。
それでも、この流れが示しているものははっきりしている。給与は「隠すもの」から、
説明できるものへと変わりつつあるということだ。
それは単なる制度の変化ではなく、企業が人をどう評価し、どう説明するのかという姿勢の問題でもある。
もし自分たちの会社が、給与を公開するとしたら。どこまでを、どう説明できるだろうか。欧米で起きているこの変化は、遠い話ではなく、これからの働き方を考えるヒントになりそうだ。
Photo:freepik