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投稿日時:2026.08.29
「フードロス」「食品ロス」という言葉はより身近なものとなり社会的な関心が高まっている。フードロス問題に取り組む新たなサービスも登場し、社会意識としても浸透してきた。
しかし、私たち生活者が想像できるフードロスといえば賞味期限切れの食品などだが、社会課題でもあるフードロスの現場では、実際にはどんなものが、どれくらいの量、どんな理由で廃棄されているのだろうか。
食品の問題は、社会の問題であり、つまるところ人の営みの問題だ。それが生産の現場であれ、コンビニの廃棄であれ、私たちと無縁のものではない。この記事では、今こそ改めて知りたいフードロスの定義や現状から、発生する原因、そして国内外で広がりを見せる多様な取り組みまで、幅広く紹介する。
フードロスとは、本来食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品のこと。日本の法律では「食品ロス」という言葉が使われているが、メディアや日常会話では「フードロス」という言葉も広く使われている。
似た言葉に「食品廃棄物」があるが、これはフードロスとはイコールではない。たとえば卵や貝の殻といった、そもそも食べられない部分も含むためより広い定義となる。
食品廃棄物という大きな枠組みの中に、食べられたはずなのに捨てられた「食品ロス」が含まれている、と考えるとわかりやすい。
ちなみにグローバルな視点で見ると少し異なり、国連食糧農業機関の定義では、生産・加工・流通の段階で生じるロスを「フードロス(Food Loss)」、小売店や飲食店、消費者の段階で生じる廃棄は「フードウェイスト(Food Waste)」として区別している。日本語の「フードロス」はこの両方を含む意味で使われていることが多い。
農林水産省と環境省が2026年6月30日に公表した最新の推計によると、2024年度の日本国内の食品ロス量は461万トンで、前年度の464万トンから3万トン減少している。
内訳は、食品関連事業者から発生する事業系食品ロスが237万トン(前年度比6万トン増)、家庭から発生する家庭系食品ロスが224万トン(前年度比9万トン減)となっている。家庭系が減った一方で事業系が増加に転じたのは、コロナ禍で縮小していた外食需要の回復が影響したとみられている。
消費者庁・農林水産省・環境省の共同推計によると、この食品ロスによる経済損失は年間3.8兆円、国民1人あたりに換算すると年間約31,000円に相当するという。
また、廃棄に伴う温室効果ガス排出量は978万トン(CO2換算)で、国民1人あたり年間約79kgのCO2を排出している計算だ。
膨大なフードロスの量に驚くが、長期的には減少傾向が続いており、2012年度の643万トンから、2019年度570万トン、2021年度523万トン、2023年度464万トンを経て、2024年度は461万トンまで減っている。
2000年度の980万トンと比べると、2024年度のフードロスの総量は約53%削減され、なかでも事業系食品ロスは2000年度比で57%削減されており、当初目標としていた「2030年度までに50%削減」を早期に達成している。その成果を踏まえ、農林水産省は2025年3月に目標を「60%削減」へと引き上げ、さらなる削減を目指している。
上記のデータでもフードロスの種類として、「事業系」と「家庭系」に分かれて数値が発表されているが、実際にフードロスが発生する原因は、事業系と家庭系では性質が大きく異なる。
事業系では、規格外品(形や大きさが基準に合わない農産物など)の廃棄、需要予測のズレによる作りすぎ・仕入れすぎ、そして「3分の1ルール」と呼ばれる商習慣が主な要因として挙げられる。この「3分の1ルール」は、フードロスの問題を語るうえで頻繁に話される課題だ。
このルールは、賞味期間の3分の1以内に小売店へ納品することを求める商習慣のこと。この期限を過ぎた商品は、賞味期限までまだ十分な日数が残っていても、行き場を失い廃棄されやすくなる。
たとえば、3ヶ月の賞味期限の商品は製造から1ヶ月以内に小売店に納品しなければならず、それを1日でも過ぎたものは、あと2ヶ月の賞味期限があるにもかかわらず、行き場を失うということだ。
世界経済フォーラムが公開した資料によると、これと同様の商習慣は海外にも存在し、アメリカでは納品期限の目安が賞味期間の2分の1、フランスは3分の2、イギリスは4分の3で、日本の3分の1ルールは国際的に見ても厳しい水準にあると指摘されている。
このルールは法ではなくあくまで商習慣だが、企業同士のやり取りだからこそ、そこを変えていく難しさがあるといえる。
一方家庭系のフードロスでは、買いすぎによる期限切れ、作りすぎによる食べ残し、野菜の皮を厚くむきすぎるなどの過剰除去が主な原因とされている。まさに私たちの家庭や日常で起きていることであり、私たちの心がけで改善できることでもある。
フードロスの問題は、単に「もったいない」というだけではない。前述の通り、廃棄には年間3.8兆円の経済損失と978万トンのCO2排出が伴い、廃棄物処理のコストや環境負荷にも直結している。
世界的な視点で見れば、大量の食料が生産・廃棄される一方で、飢餓や栄養不足に苦しむ人々が存在するという、需給の不均衡も指摘されている。
その環境負荷がさらなる環境問題を生み出し、それにより需要の不均衡が拡大される可能性もある。フードロスというひとつの問題が、複数の社会課題と結びついているのだ。
最近ではこのフードロスを削減すべく、さまざまなサービスや取り組みが広がっている。あらゆる角度から行われている取り組みをいくつか紹介する。
前述で、日本の「3分の1ルール」が厳しすぎることについて、より柔軟なルールが設けられている国として、「3分の2ルール」のフランスと、「4分の3ルール」のイギリスを紹介した。これらの国ではどのような規制やルールが設けられているのか見てみよう。
2030年までに1人当たりの食品廃棄量を2007年比で50%削減する目標を掲げている。直近のマイルストーンレポートでは18.3%の削減まで進んでいるが、目標達成には一層の加速が必要とされている。
また、賞味期限表示そのものを見直す動きも、企業の自主的な取り組みにより広がっている。2018年にテスコが先陣を切って以降、ウエイトローズやマークス&スペンサーをはじめとした主要チェーンも追随。2025年時点では英国の大手スーパーの多くが、果物・野菜を中心に賞味期限表示を撤廃している。廃棄のタイミングを消費者自身の判断に委ねることで、廃棄削減につなげる狙いだ。
同じ「納品期限に余裕を持たせている国」であっても、各国の取り組みにはその国特有の個性に合わせ、取り組みが推進されているようだ。
フードロスは、事業系・家庭系それぞれに異なる原因があり、日常でも貢献することができる社会課題だ。
自身の生活で起こる買いすぎや無駄を見直してフードロスを減らすことはもちろん、フードロス削減に取り組む企業やサービスを消費者として後押しすることもできる。または、賞味期限内でも余ってしまいそうなものは、フードバンクに届けることもできる。
政府から発表されているフードロスの量では、事業系と家庭系の総量に大きな開きはなかった。それは家庭系のフードロス削減への努力が重要な意味を持つということの証でもある。多様化が進むフードロス削減の取り組みとともに、消費者の生活もアップデートしていくことができれば、フードロス削減のための大きな推進力へと変わるに違いない。
Photo:Magnific